# 02. サービスコンセプト — 「場」と「トーク」の二軸設計

> 本書は `01_executive_summary.md` で置いた輪郭を、思想のレベルまで掘り下げる文書です。
> ここで固めたいのは、「キクバとは何であって、何ではないか」を一言で言い切れる状態です。

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## 1. 出発点：なぜ「話し方」ではなく「場」なのか

### 1.1 話し方アプリの構造的な限界

話し方を改善するアプローチは、暗黙のうちに一つの前提を置いています。

> **聞き手は、常に聞く準備ができている。だから、あとは話し手の腕次第だ。**

この前提が成り立つ場面は、実はかなり限られます。テレビの前、劇場、有料セミナー——
つまり「聞くと決めて座った人」の前だけです。

しかし実務の提案は違います。相手は次の予定を気にしていて、決裁権を持たず、
そもそもこの打ち合わせに乗り気ではないかもしれない。
この状態の相手に、どれだけ流暢に話しても届きません。**話し手のスキルの外側に、届かない理由がある**からです。

### 1.2 「場」は環境ではなく、条件の総体である

キクバが言う「場」は、会議室のことではありません。次の5条件の総体です。

| 条件 | 具体例 | 設計できるか |
|------|--------|-------------|
| 関係性 | 初対面か / 信頼済みか / 上下関係があるか | ある程度できる（誰を同席させるか、事前に何を送るか） |
| 時間 | 30分か60分か / 終わりが見えているか / 割り込みがあるか | できる（時間の切り方、終了時刻の宣言） |
| 空間 | 対面か / オンラインか / 向かい合うか横並びか / 画面共有はいつか | できる（座り方、共有のタイミング） |
| 心理 | 評価される感じか / 一緒に考える感じか | できる（最初の一言の設計） |
| 導入 | 最初の30秒で「自分ごと」になったか | 最も設計できる |

ここが本企画の中核的な発見です。
**「場」は運や相性ではなく、事前に設計できる変数の集合である。**
そして、そのほとんどが商談の当日ではなく、前日〜直前に決まっています。

### 1.3 では、トークは要らないのか

要ります。ただし**順番が後**です。

場が整っていないところに良い台本を置いても、台本は空回りします。
逆に、場が整っていれば、多少たどたどしくても相手は聞きます。

だからキクバの出力は、必ずこの順序を守ります。

```
① 場の提案  →  ② 導入（最初の60秒）の提案  →  ③ 本編の進め方
```

この順序は UI の都合ではなく、**プロダクトの主張**です。
順序を崩した瞬間に、キクバは「よくあるプレゼンAI」に戻ります。

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## 2. 価値仮説

### 2.1 中心仮説

> 提案の前に「場の条件」を5分だけ設計すると、相手の聞く姿勢は測定可能なレベルで変わる。
> そしてその設計は、汎用テンプレートではなく「この回の条件」に閉じたときにだけ機能する。

### 2.2 サブ仮説

1. **具体性が価値を決める** — 「アイスブレイクを」ではなく「最初の一文はこれ」まで降りたとき初めて使われる
2. **事前5分は払える** — 商談前に30分の準備は無理でも、5分なら払える。だから入力は短くする
3. **振り返りは3問が限界** — 商談直後に長いフォームは埋まらない。3問なら埋まる
4. **蓄積が継続理由になる** — 「効いた型」が自分の言葉で溜まると、アプリを開く理由が生まれる
5. **測るべきは相手の変化** — 自己評価（うまく話せた）ではなく他者観察（質問が出た）のほうが再現性がある

### 2.3 仮説が崩れるとしたら

- ユーザーが「そんなの分かってる」と感じる粒度しか返せない → 一般論AI化
- 入力が面倒で、結局その場の勘でやってしまう → 起動されない
- 出力が長すぎて商談前に読めない → 使われない

この3つは、そのまま `05_design_principles.md` の品質基準になります。

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## 3. 「場」の設計論

### 3.1 場を決める4つのレバー

キクバが実際に動かせるレバーは、次の4つです。

**レバー1：時間の切り方**
30分を「30分の説明」にしない。「最初の5分は聞くだけ / 次の15分で一緒に見る / 最後の5分で次を決める」と分ける。
終わりの時刻を最初に宣言するだけで、相手の警戒はかなり下がります。

**レバー2：視線の置き場所**
向かい合って資料を渡すと「審査」になります。横並びで同じ画面を見ると「共同検討」になります。
オンラインなら、画面共有を最初から出すか、最初の5分は顔だけにするかで空気が変わります。

**レバー3：情報の出す順番**
資料の説明から入ると、相手は「聞かされる側」に固定されます。
先に相手の困りごとを一文で確認すると、相手は「参加する側」に移ります。

**レバー4：同席者の設計**
決裁者不在の場で決裁を求めない。逆に、決裁者がいる場では現場の不安に踏み込みすぎない。
誰がいるかで、話すべき内容そのものが変わります。

### 3.2 聞き手タイプの初期分類

網羅ではなく、**行動が変わる分岐**として4つだけ持ちます。

| タイプ | 兆候 | 効く場の作り方 |
|--------|------|----------------|
| 警戒型 | 質問が少ない、腕を組む、即答を避ける | 提案しない時間を先につくる。決めさせない。 |
| 多忙型 | 時計を見る、要点を急かす | 最初に結論と所要時間を宣言する。資料を減らす。 |
| 懐疑型 | 根拠を細かく突く | 事例と数字を先に。断定を避け、前提を明示する。 |
| 協力型 | 自分から補足してくれる | 一緒に考える形に振る。決めどころまで進める。 |

分類の目的は相手をラベリングすることではなく、**「この場では何をやめるか」を一つ決めるため**です。

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## 4. 「トーク」の設計論 — 効くのは最初の60秒だけ

### 4.1 なぜ60秒に絞るのか

台本全体を用意しても、その通りには進みません。
一方で、**最初の60秒だけは、ほぼ確実に自分の想定通りに話せます**。
そしてこの60秒で、相手が「聞く側」に回るか「評価する側」に回るかが決まります。

投資対効果が最も高い1分に、リソースを集中します。

### 4.2 最初の60秒の型

```
[0-15秒] 終わりの宣言    「30分いただいてます。25分でお返しします」
[15-35秒] 相手の困りごとの一文確認  「◯◯が課題、という理解で合っていますか」
[35-50秒] 今日やることの宣言  「今日は決めずに、条件だけ揃えたいです」
[50-60秒] 進め方の合意   「同じ画面を見ながら進めてもいいですか」
```

この型のポイントは、**60秒のあいだ一度も自社の話をしないこと**です。
自社の話は、相手が聞く側に回ったあとで始めます。

### 4.3 やってはいけないことの型

キクバは「やること」と同じ重さで「やらないこと」を返します。
条件別に、失敗しやすい型を出します。

- 初対面 × 30分 × オンライン → **資料の説明から入る**
- 決裁者不在 → **その場でクロージングしようとする**
- 相手が多忙型 → **背景説明を丁寧にやりすぎる**
- 相手が警戒型 → **こちらから質問を連発する**

「やらないこと」のほうが、行動として実行しやすい。ここは意図的な設計です。

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## 5. 命名とコピーの設計

### 5.1 なぜ「キクバ」なのか

- 「聞く場」をそのまま音にした。説明が1秒で終わる
- カタカナ4文字で口に出しやすく、社内で話題にしやすい
- 「話す」側の語が一つも入っていない。名前の時点で立場を宣言している

### 5.2 コピーの階層

| 階層 | コピー | 使う場所 |
|------|--------|----------|
| 主張 | 話を上手くするな。聞きたくなる場をつくれ。 | LP Hero・エンドカード |
| 約束 | 相手が、自分から聞きたくなる。 | 広告・OGP |
| 説明 | 提案の前に、5分で「聞く理由」を設計する。 | 機能説明・App Store |
| 共感 | 話し方の本は読んだ。でも、あの場では使えなかった。 | 課題提起セクション |
| 免責 | あなたの話が悪いんじゃない。聞く動機が、まだ立ち上がっていないだけだ。 | オンボーディング |

最後の「免責」は特に重要です。
このサービスは、**うまくいかなかった人が自分を責めるのをやめる**ところから始まります。

### 5.3 使わない言葉のリスト

`成約率` `クロージング率` `説得` `落とす` `刺さる提案を自動生成` `誰でもプロ`

これらは短期のCVを上げるかもしれませんが、サービスの立場を裏切ります。
言葉を変えると、プロダクトの中身も少しずつそちらへ引きずられます。

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## 6. キクバではないもの（境界線）

| よく似ているもの | キクバとの違い |
|------------------|----------------|
| プレゼン練習アプリ | 話者の流暢さを鍛えない。場の条件を設計する |
| 提案書自動生成AI | 資料を作らない。資料を「いつ出すか」を決める |
| 商談解析・議事録AI | 事後の記録が主目的ではない。次の場づくりに1点だけ戻す |
| セールスイネーブルメント | 組織の成約率管理ではない。個人の対話の質から始める |
| コミュニケーション研修 | 一般論のスキル習得ではない。この回の条件に閉じる |

**キクバは、商談の「前」5分と「後」1分にだけ存在するアプリです。**

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## 7. なぜ今なのか

1. **オンライン商談が定着し、場の変数が増えた** — 画面共有・カメラ・同席者が可変になり、設計の余地が広がった
2. **AIが「この条件で」の具体案を出せるようになった** — 一般論しか返せなかった時代は終わった
3. **提案の中身がコモディティ化しつつある** — 内容で差がつきにくいぶん、聞かれ方の差が効いてくる
4. **一方で、AIによる自動生成の氾濫で「聞く気」の総量は下がっている** — だからこそ、聞く動機の設計に値段がつく

3と4は表裏です。
つくれることの価値が下がるほど、**聞いてもらえることの価値が上がります**。

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## 8. この文書で決めたこと

- キクバの「場」とは、関係性・時間・空間・心理・導入の5条件の総体である
- 出力の順序は `場 → 導入 → 本編` に固定する。これは思想であり、変更しない
- トーク支援は最初の60秒に集中する
- 「やらないこと」を「やること」と同じ重さで返す
- 名前とコピーで「話す側」の語彙を使わない
- キクバは商談の前後にだけ存在し、本番中は開かれないことを是とする

次は `03_user_experience.md` で、これを実際の人と時間の流れに落とします。
