調剤過誤は、薬剤師の不注意ではない。これは、現代の医療が抱える構造的な課題である。一人の薬剤師が、一日に処方する医薬品は平均して百五十剤。そのひとつひとつが、患者の命に直結している。
薬剤師という職能は、元来「医師の処方を二重に検算する最後の砦」として制度設計されてきた。だが、現場に立てば分かる。午後の繁忙時間帯、窓口で待つ患者の数、薬歴管理、服薬指導、そして疑義照会。これらすべてを、一人、あるいは二人の薬剤師が同時にこなしている。人間の注意力には、物理的な限界があるのである。
日本薬剤師会の統計によれば、調剤過誤の発生要因の第一位は「確認不足」とされる。だが私たちは、この言葉を注意深く読み直さなければならない。それは個人の怠慢ではなく、確認するための時間と認知資源が、構造的に不足しているということに他ならない。
薬剤師が見落とすのではない。
制度が、見落としを許容している。
私たちは、この構造に介入する方法を模索してきた。増員か。教育か。それとも労働環境の改善か。いずれも必要な処方箋であることに疑いはない。しかし、そのどれもが、根本治療としては遅効性にすぎた。
そこで、私たちは別の角度からこの課題に向き合うことにした。もし、処方箋を受け取った瞬間に、調剤台に並ぶ薬剤と処方内容の照合を、誰かが「静かに、確実に、一瞬で」行ってくれたら──。もしその「誰か」が、疲れを知らず、集中を切らすことなく、薬剤師の目の前で二番目の確認者として機能してくれたら──。
Mitorix は、その問いから生まれた。薬剤師に取って代わるためではない。薬剤師が本来の職能に集中できる時間を、取り戻すために。